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医師法上、タトゥーはセーフで、アートメイクはアウト?

弁護士中野 丈

令和5年7月3日付で、厚生労働省から各都道府県衛生主管部宛てに、医師免許を有しない者が以下の行為を業として行う場合には、医師法に違反すると解する旨の通知が発せられました(医政医発0703第5号)。
 (1)針先に色素を付けながら皮膚の表面に墨等の色素を入れて、眉毛を描く行為
 (2)上記と同様の方法により、アイラインを描く行為
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc7817&dataType=1&pageNo=1

この点、医師免許を有しない者によるタトゥー施術行為については、令和2年9月16日の最高裁決定により、医師法に違反しないとの判断が示されておりました(本サイトにおける当時の解説記事も、次のアドレスからご参照ください)。
https://spring-partners.com/topics/case/1920/

今回の通知と令和2年の最高裁決定の間には、整合性がないようにも思われるところです。しかしながら、今回の通知も最高裁決定を踏まえた上でのようであり、判断の分かれ目のポイントについても触れられています。
 すなわち、上記の方法で眉毛を描く行為やアイラインを描く行為は、(タトゥーとは異なり)医療の一環として医師・看護師等の医療従事者が関与している実態があることから、医師免許を有しない者が行うことが禁止されている「医行為」に当たらないとされています。

確かに、令和2年の最高裁決定は、医行為に当たるか否かについて、行為時の実情、行為に対する社会の受け止め方という観点も判断要素としたうえで、保健衛生上危害を生ずるおそれのあることに加え、医療及び保健指導に属すること(医療関連性)も医行為に該当するための要件としています。
 上記の実態をとらえて、タトゥーには医療関連性が無いが、眉毛やアイラインについてはそれがあるとの一応の線引きはなし得ると思われます。
 もっとも、芸術的趣向が著しい眉毛やアイライン等、タトゥーとの線引きが難しいものもあるのではないでしょうか。

なお、今回発せられた「通知」は、法令の運用や解釈の考え方等について行政機関に宛てて発せられるもので、法令とは異なり、それ自体が国民の権利義務を直接に定めるものではありません。但し、その内容に従って各行政機関が取り締まりを行うことが予想されるものです。

以上