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競馬の払戻金をめぐる所得税法違反控訴審判決(大阪高裁平成26年5月9日)について

 競馬予想ソフトを用いて継続的に大量に勝馬投票券(馬券)を購入していた事案における払戻金をめぐる所得税法違反事件において、平成2659日、大阪高等裁判所は、一審(大阪地裁平成25523日判決(平成23年(わ)第625号) 裁判所WEBサイト(http://www.courts.go.jp/)下級審裁判例情報に掲載)に続き、当該事案における払戻金を「雑所得」と認定し、的中馬券以外の馬券(いわゆる外れ馬券)の購入費を「経費」と認める判決を下しました(平成26510日日本経済新聞記事等)。

 馬券の払戻金に関する本裁判の主要な争点は、馬券の払戻金が所得税法上の「一時所得」又は「雑所得」のいずれに分類され、経費として外れ馬券の購入費を控除できるかという点にあります。

この点、従来、国税庁は、馬券の払戻金に係る所得は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」である「一時所得」に該当するものと取り扱っており(所得税基本通達341)、本事案においても、「一時所得」に該当するものとして、「その収入を得るために支出した金額」として控除すべき金額は、的中した馬券(いわゆる当り馬券)の購入金額のみであるとし、外れ馬券の購入費の控除を認めないものとして争っていました。これに対して、本裁判の原審(大阪地裁)は、本事案においては、競馬予想ソフトを使い、インターネットを通じて馬券を継続的に大量に購入している点に着目し、本事案の馬券購入行為は、一連の行為としてみれば恒常的に所得を生じさせ得るものとして「営利を目的とする継続的行為」に該当し、「雑所得」に該当すると判示し、外れ馬券を含めて一年間における馬券購入金額を必要経費として控除することを認めており、今回、本裁判(控訴審)においても当該判断が維持されたものです。

所得税法上の所得の分類の定義、特に「一時所得」の定義については、条文の定義からは一義的に明らかでない点もあり、本件の主要な争点は、馬券の払戻金に限らず所得税法の根幹にかかわりうる問題を含んでおり、所得分類の定義の再検討も含め、今後の裁判、学説及び立法・通達等の議論の動向に注意を要するものと考えられます。

以上