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スマホ特定ソフトウェア競争促進法が成立しました ~OS・アプリストア・ブラウザ・検索エンジンの競争促進~

弁護士上鍋大貴

令和6年6月12日、スマートフォンのソフトウェアのうちOS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジン等の寡占状態にある分野について、競争を促し多様な主体によるイノベーションを活性化させるという趣旨で、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が成立しました。

本法律は、公布日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。

本法律の概要は、以下のとおりです。




1.規制対象事業者の指定

本法律では、①「基本動作ソフトウェア」(いわゆるOS)のほか、「個別ソフトウェア」(すなわち通常のアプリ)のうち②「アプリストア」及び③「ブラウザ」、さらには④「検索エンジン」をそれぞれ定義付けたうえで、①~④の総称を「特定ソフトウェア」とし、特定ソフトウェアを提供する「特定ソフトウェア事業者」のうち一定の規模以上の事業者として公正取引委員会が指定した者を対象としています。




2.対象事業者の禁止事項

対象事業者に対して禁止されるのは、主に以下のような行為です。

  • 対象事業者が集めた個別アプリに関する利用状況等のデータについて、当該アプリ事業者と競合するサービスを提供する目的で用いること。
  • 個別アプリ事業者がOS・アプリストアを利用する条件等について、不公正な取扱いをすること。 【※iPhoneにおいて、アプリで広告識別子(ユーザー利用の追跡に用いられるもの)を使用する場合に、自社アプリと他社アプリで表示が変わること等】
  • (OS事業者について)他の事業者が当該OSを通じて別のアプリストアを提供したり、スマホ利用者が当該アプリストアを利用したりするのを妨げること。【※iPhoneにおいてApple Storeしか利用できないこと等】
  • (OS事業者について)他の事業者が個別アプリを提供するに当たり、当該OSで制御される機能(ボイスアシスタント等)をOS事業者と同等の性能で利用するのを妨げること。
  • (アプリストア事業者について)アプリ内の課金システムについて、他の事業者が提供している課金システムを利用するのを妨げること。
  • (アプリストア事業者について)アプリ内において、アプリの外(ウェブサイトや他アプリ)で商品を販売する情報やリンクを表示すること等を妨げること。
  • (アプリストア事業者について)当該事業者が提供するブラウザエンジン以外を個別アプリ内で利用するのを妨げること。
  • (検索エンジン事業者について)検索結果について、当該事業者が提供する商品等をそれと競争関係にある他の商品等よりも優先的に扱うこと。【※Googleの場所検索におけるGoogle Mapのトップ表示等】



3.対象事業者のその他遵守事項

その他にも、対象事業者が遵守すべきと定められていることとして、以下のようなものがあります。

  • データの管理体制等を開示すること。
  • データ・ポータビリティーのツールを提供すること。【※iPhone・Android製品の間でデータの移行が簡便でないこと等から】
  • 標準設定(デフォルト設定)について、変更を簡便に行うことができるようにし、また利用者の選択の機会が特に確保される必要があるものについては選択画面を表示させるようにすること。
  • 仕様変更を行う場合には、規則で定められる期間を確保して事前に情報の開示等を行うこと。



4.違反に対する措置等

対象事業者は毎年報告書を提出することとされており、本法律に違反した場合の違反是正命令や課徴金納付命令の規定も存在します。


対象事業者となるのは現在寡占状態にある企業になりますが、本法律の整備の目的は冒頭にも述べましたとおり、まさに他の事業者による参入及び競争にあります。当事務所では、このようなアプリケーションを取り扱われている方々も含め、広くご相談を承っております。ご遠慮なくご相談ください。