コラム

取引先の倒産対応~自社債権の回収~

弁護士髙石 竜一

企業信用情報の調査等を実施する株式会社東京商工リサーチは、2023年度の負債額1000万円以上の全国企業倒産は、件数が9053件(前年度比31.5%増)、負債総額は2兆4630億7800万円(同5.9%増)に上ったことを発表しました。件数は、2年連続で前年度を上回り、2014年度(9543件)以来、9年ぶりの9000件台となっています。

【全国企業倒産状況(株式会社東京商工リサーチホームページ)】

https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1198490_1610.html

全国で1日に20社を優に上回る数の企業が倒産している計算となり、どの企業にとっても、取引先の倒産に遭遇するリスクは、無視できないものとなっています。

倒産手続には、法的倒産手続のほか私的整理もあり、法的倒産手続にも再建型・清算型の各種手続がありますが、取引先の倒産といった場合、破産手続であることが多いものと思われます。

取引先が破産するという情報を得た場合、まずは、自社が当該取引先に対し、いくらの債権を有しているかを直ちに確認するとともに、自社の債権に担保権が設定されているかを確認する必要があります。破産手続において、担保権の設定がない債権は、破産債権として、他の債権者との間で平等に配当による弁済を受けることとなり、破産する取引先の財産状況によっては配当による弁済額が0円となることも多々あります。

他方、担保権が設定された債権については、破産手続によらず担保権を実行し、債権の回収を図ることができます。取引先から抵当権や動産・債権集合譲渡担保の設定を受けている場合には、担保権の存在を失念することは少ないかと思われますが、留置権や先取特権といった法律の定めにより当然に発生する担保権もありますので、注意が必要です。

また、自社が取引先に対し債務を負担している場合には、債権・債務の発生原因が生じた時期に応じて、自社が取引先に対し有している債権と相殺することにより、債権の回収を図ることが可能なときがあります(破産法67条、71条、72条)。

なお、テレビドラマなどでは、倒産直前の会社に取引先が殺到し、我先に債権の回収を図ろうとする場面を見かけることがあるかと思います。しかし、このような形で債権の回収を図ったとしても、裁判所により破産手続開始決定がされた後、破産管財人により否認権(破産法162条1項)を行使される可能性が高く、回収行為が無為に帰することになりかねませんので、ご注意ください。

以上のとおり、取引先の倒産対応に当たっては、取引先が倒産状態に陥る前の備えが重要であるとともに、倒産時には破産法の理解に基づく適切な対応が必要となります。当事務所には、破産手続開始申立代理人や裁判所から選任される破産管財人としての豊富な経験を有し、破産法に熟知した弁護士が多数在籍しており、取引先が倒産した場合の企業をサポートすることが可能な体制を整えております。取引先の倒産についてお困りの場合には、弊所までご相談ください。

以上