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「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定

弁護士上鍋大貴

平成30年1月に定められた「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が、本年7月8日に改定されました(※1)。

1.「副業・兼業の促進に関するガイドライン」とは

そもそも「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下「副業ガイドライン」といいます。)とは、働き方改革の一環として議論された「柔軟な働き方がしやすい環境整備」の1つとして検討され、原則として副業・兼業を認める方向で定められたものです。

副業ガイドラインは、副業・兼業を認めることで、労働者にとっては、自らのキャリアを主体的に形成し、やりたいことに挑戦できる等のメリットがあり、他方、企業にとっても、労働者が自社の中では取得できない知識やスキルをもとに成長し、結果的に自社に貢献してもらえる等のメリットがあるとしています。

もっとも、企業側としては、原則として副業・兼業を認めるとしても、事情によっては副業・兼業を認めることが労働者や企業に悪影響を及ぼすと判断し、副業や兼業を制限したい場合があることも当然だと考えられます。

副業ガイドラインはこの点について、裁判例を参考にしながら、

①労働提供上の支障がある場合
 ②業務上の秘密が漏洩する場合
 ③競業により自社の利益が害される場合
 ④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

と整理し、原則は副業・兼業を行うことができるとしたうえで、①から④のいずれかに該当する場合には、副業・兼業を禁止又は制限することとしておくという方法を想定しています。

2.今回の改定の内容

今回改定されたのは、企業の副業・兼業に関する情報の公表の点です。具体的には、

  • 企業は副業・兼業の取り組み内容を公表することにより、労働者がそれを踏まえて職業を選択することができるようにすることを通じて、労働者の多様なキャリア形成を促進することが望ましいこと

  • 「副業・兼業を許容しているか否か」及び「条件付許容の場合はその条件」を自社のホームページ等で追加することが望ましいこと

  • 労働者としては、自らのキャリアを念頭に、公表された会社の副業・兼業に関する情報を参考にすることが有効であること

の3つが追加されました。

なお、このうち「条件付許容の場合」の条件とは、1の①から④のような場合に該当しないこと等とされています(副業ガイドラインQ&A4-3の公表例参照(※2)。)。

以上のように、厚生労働省からは、積極的に副業・兼業を原則として認めることだけでなく、その事実を公表することも求められております。

しかし、副業・兼業を認めるとなると、従業員の労働時間及び健康をさらに管理する必要等、どのような場合に副業・兼業を認めるかということ以外にも問題が生じ得ます。

これらの点につきましても、副業ガイドラインに記載がございますので、より詳しい情報をお求めの方は、厚生労働省のホームページの副業ガイドライン及びQ&Aをご確認いただき、また、ご不明点等ございましたら当事務所までご相談ください。

なお、上記のとおり副業ガイドラインの改定により副業・兼業の一層の促進が求められている一方で、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」という労基法38条1項(いわゆる通算規定)の存在故に、企業にとっては副業・兼業を認めることに慎重とならざるを得ないのが実情であると思われますが、当事務所では、そういった実情も踏まえたリーガルサービスを提供して参ります。

≪弁護士 上鍋大貴≫