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「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する質疑応答集(第3集)の公表

弁護士石井 林太郎

厚生労働省は、2021年9月下旬、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)に関する質疑応答集(第3集)を公表しました。

当該質疑応答集では、いわゆるアジャイル型開発(質疑応答集(第3集)QA1※2参照)と呼ばれるシステム開発取引のように、発注者側の開発責任者と発注者側及び受託者側の開発担当者が一つのチームを構成して相互に密に連携し、随時、情報の共有や助言・提案を行う形態の取引であっても、具体的な取引実態に照らし、発注者側と受注者側の開発関係者が発注者側と受注者側の開発関係者が対等な関係の下で協働し、受注者側の開発担当者が自律的に判断して開発業務を行っていると認められる場合には、適正な請負等と評価されることが明確にされています。

アジャイル型開発のような取引については、その性質上、発注者側の責任者・担当者が受注者側の担当者との間で、緊密な連携の下に情報共有や助言・提案を行われることになります。しかしながら、これらの緊密な連携が、発注者が受注者側の担当者を直接指揮命令することを禁じた法制度(いわゆる偽装請負の禁止)に直ちに抵触するものではないことについて、規制当局から示された具体的な判断基準や指標がなく、また、とりわけシステム開発取引のように取引の本質を理解するために専門的知見を必要とする取引については、規制当局の担当者に個別に問合せを行っても表層的あるいは硬直的な回答しか得られないといった状況が生じており、適法な請負等取引であるかどうかの見通しがつきづらいという不都合が生じていました。

質疑応答集(第3集)は、このような不都合を踏まえ、厚生労働省が実務関係者からもヒアリングを行い、その結果を基に作成されたものです。同質疑応答集はアジャイル型開発を念頭にしたものですが、同質疑応答集で示された考え方は、アジャイル型開発取引に限らず、発注者側の責任者・担当者が受注者側の担当者との間の緊密な連携・意思疎通が必要となる他の形態の取引にも妥当すると考えられます。

今回の質疑応答集の公表は、適正な請負等取引を行う上で一定の後押しとなりますが、規制当局側からの調査に耐えられるようにするためには、実態として違法請負に当たらないことはもちろん、契約書条項や体制図等を通じて適正な請負等であることを客観的に説明できるようにしておくことも重要です。

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)に関する質疑応答集(第3集) https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gigi_outou01.html

※質疑応答集(第3集)の作成に至るまでの3度のヒアリングの議事要旨等も公表されています。