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株式交付制度の創設について

弁護士青野 瑞穂

令和元年12月4日、会社法の一部を改正する法律が成立し(同月11日公布)、一部の制度を除き、令和3年3月1日から施行されました。
今回は、そのうちの株式交付制度の創設についてご紹介させていただきます。

1.株式交付制度とは
 株式交付制度とは、株式会社(以下、「買収会社」といいます。)が他の株式会社(以下、「対象会社」といいます。)を子会社(子会社のうち、法務省令が定めるものに限ります。)とするために、対象会社の株式 を譲り受け、株式の譲渡人に対してその対価として、買収会社の株式を交付する制度のことをいいます。

2.従前の問題点
 改正前会社法においては、株式を対価とするM&Aの手法として、株式交換(対象会社の発行済株式の全てを完全親会社となる会社に取得させる方法)のほか、現物出資による方法(買収会社が対象会社株主から現物出資財産として対象会社株式の給付を受け、これに対し買収会社株式の新株発行等をすることにより対価として対象会社株主に対し買収会社の株式を割り当てる方法)があります。
 もっとも、株式交換は外国会社を対象会社とする場合には利用できないと解されていること及び対象会社を完全子会社化せざるを得ないこと、並びに現物出資の方法においては検査役の調査が必要であること等により手続の煩雑さやコストがかかること等の弊害が指摘されてきました。
 そこで、完全子会社とすることを予定していない場合であっても、現物出資規制を受けずに、株式会社が他の株式会社を子会社とするために自社の株式を他の株式会社の株主に交付することができる制度として、株式交付の制度が新設されました。

3.株式交付の内容・手続の概要
 株式交付における買収会社及び対象会社は、いずれも株式会社に限られ、その目的は対象会社を新たに子会社とする場合に限定されており、既に子会社である対象会社の株式を買い増す場合や対象会社を子会社化しようとしない場合には利用できません(なお、「子会社」は法務省令に定められるものに限定されています。)。また、対象会社株式を取得する対価としては、買収会社株式と併せて金銭交付をすることも可能です。
 必要な手続としては、買収会社においては株式交換に準じた手続が定められており、株式交付計画を定め、株主総会の特別決議による承認が必要で、反対株主には株式買取請求権が認められ、債権者保護手続も定められています。これに対し、株式交付においては買収会社と対象会社株式の譲渡人との個別的な合意により株式譲受がなされるため、対象会社における特段の手続は定められていません。

4.まとめ
 以上では株式交付制度の概要をごく簡単にご説明させていただきましたが、実際にM&Aをご検討される際には他の制度との綿密な比較、及び必要な手続を詳細な点まで確認し確実にスケジュールどおりに進行していくことが不可欠となります。
 当事務所では経験豊富な弁護士がお客様のご希望・ご心配を丁寧にお伺いした上でご一緒にプランを考えさせていただいております。
お悩みの際は、まずは一度ご相談ください。

≪弁護士 青野 瑞穂≫
以上