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障害者法定雇用率の引き上げについて

弁護士山口 源樹

障害者の雇用の促進等に関する法律施行令及び身体障害者補助犬法施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令(令和2年政令第311号)が令和3年3月1日に施行されました。これにより障害者法定雇用率の引き上げ等に関する経過措置規定(平成29年政令第175号附則第2項から第5項)が削除されたため、同日より障害者法定雇用率が以下のとおり引き上げられることとなりました。

・民間企業                                      :2.2% → 2.3%

・国及び地方公共団体等              :2.5% → 2.6%

・都道府県等の教育委員会           :2.4% → 2.5%

上記のとおり、従前は、民間企業においては、障害者法定雇用率が2.2%であったため、事業主は、従業員を45.5人以上雇用している場合には、障害者を1人以上雇用する義務を負っておりました。しかし、令和3年3月1日以降は、障害者法定雇用率が2.3%に引き上げられたため、従業員を43.5人以上雇用している事業主も障害者を1人以上雇用する義務を負うことになります。従業員数が43.5人以上45.5人未満の事業主の皆様におかれましては、令和3年3月1日より新たに障害者の雇用義務が生じておりますのでご注意ください。

また、この障害者法定雇用率の引き上げにより、従前、障害者を雇用していた事業主であっても、法定雇用障害者数に変動が生じることがございますので(例えば従業員が135人であれば雇用しなければならない障害者の数は2人から3人に、175人であれば3人から4人にといった変動が生じます。)、事業者の方々におかれましては、ご自身の会社における法定雇用障害者数を今一度ご確認ください。

法定雇用障害者数=(短時間労働者数×0.5+常用雇用労働者数)×障害者法定雇用率

 

※短時間労働者:週所定労働時間が20時間以上30時間未満の者

※常用労働者:以下のとおり

①雇用期間の定めのない労働者

②1年を超える雇用期間を定めて雇用されている者

③一定期間を定めて雇用される者であって、その雇用期間が反復更新されている者であり、かつ、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者、又は雇入れのときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者(1年以下の期間を定めて雇用される場合であっても、更新の可能性がある限り、該当する。)

④日々雇用される者であって、雇用契約が日々更新されている者であり、かつ、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は雇入れの時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者

※週所定労働時間が20時間未満の者は法定雇用障害者数の計算にあたってはカウントされません。

雇用義務を履行しない場合、障害者雇用納付金制度(障害者法定雇用率未達成の企業のうち常用労働者100人超の企業から障害者雇用納付金が徴収され、この納付金を元に障害者法定雇用率を達成している企業に対する調整金、報奨金等を支給する制度)に基づく納付金の支払義務を負ったり(同法第53条から第68条参照)、また、行政指導(同法第46条第6項)や公表(同法第47条)がなされる可能性もありますのでご注意ください。

障害者法定雇用率引き上げの詳細や障害者雇用に関するその他ルールについては以下の厚生労働省のリンクよりご確認ください。

 事業主の方へ|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

以上

≪弁護士 山口 源樹≫