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自筆証書遺言に関する判例紹介・改正民法等施行について

弁護士新保 雄司

自筆証書遺言の有効性に関する最新判例の紹介、及び自筆証書遺言に関する改正民法等の施行(平成31年1月13日、令和2年7月10日)について

1 自筆証書遺言の成立日と相違する日の日付が記載されていても直ちに遺言書が無効となるものではないとされた事例~最高裁令和3年1月18日判決~

自筆証書遺言は、全文・日付及び氏名の自書、押印が、遺言が有効となる要件であり(改正民法による方式緩和に関しては後述2)、いずれかを欠くものは無効であり、これらが全て整った時点で真実遺言が成立したことになります。また、自筆証書遺言には真実遺言が成立した日の日付を記載しなければならないとされています(最高裁昭和51年(オ)第978号昭和52年4月19日第三小法廷判決)。

しかし、最高裁令和3年1月18日判決は、入院中に遺言の全文、同日の日付及び氏名を自書し、退院した9日後(自書した27日後)に(弁護士の立ち会いの下で)押印した事実関係の下では、真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに遺言は無効となるものではないと判断しました。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/956/089956_hanrei.pdf

本件は、最高裁が、自筆証書遺言には真実遺言が成立した日の日付を記載しなければならないとの原則は維持しつつも、事案に応じて、遺言者の真意の実現確保の点で支障が無いとみられる場合には原則を緩和しうることを示した一事例であると解されます。

2 自筆証書遺言に関しては、近年、2つの大きな制度改正がなされております。

その1つは、自筆証書遺言の方式緩和です。かつて、自筆証書遺言は全文を自書しなければなりませんでしたが、平成31年1月13日以降、相続財産の目録を添付する場合、目録については自書でなくてもよいことになりました。但し、その目録について自書ではない記載があるページ全てに署名押印をする必要があります。

かつては、複雑な内容の遺言はその煩雑さ故に自筆証書遺言で行うことを事実上断念せざるをえないケースが多々ございましたが、本制度改正により、財産目録を利用することによって簡便に自筆証書遺言を行うことができるようになりました。この点に関しては、以前当事務所平成30年12月14日付トピックス【ニュース】自筆証書遺言の方式緩和について | スプリング法律事務所 – SPRING PARTNERS (spring-partners.com)でもご紹介しておりますので、併せてご確認頂ければと存じます。

3 もう1つの制度改正は、法務局による遺言書保管制度の創設です(法務局における遺言書の保管等に関する法律)。令和2年7月10日より、遺言者が自筆証書遺言を作成して法務局に出頭し、その保管を申請することができようになりました。

提出された自筆証書遺言は、自筆証書遺言としての法律上の方式を満たしているか、法務省の定めた様式を満たしているか、について審査を経た上で、法務局が原本を保管し、遺言書は画像データとして記録されます。

この制度を利用することによって、自筆証書遺言の紛失や隠匿を防止して遺言者の遺志を実現しやすくし、相続人にとっても遺言書の存在を把握しやすくする利点があります。

また、遺言者が亡くなって相続が開始したとき、自筆証書遺言書の保管者・発見者は家庭裁判所に遺言書を提出して検認を請求しなければなりませんが(民法1004条)この遺言書保管制度を利用した遺言書の場合は検認が不要とされており、また、相続人の一人が遺言書の画像情報の証明書の交付などをすると他の相続人に通知がなされるなど、相続人による相続手続の簡素化に役立つことにもなります。

【19●●修正版】遺言保管ポンチ+(タブレットVer) (moj.go.jp)

4 今後、自筆証書遺言を作成するニーズが高まっていくものと予想されますが、当事務所ではそのようなご相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談下さい。

≪弁護士 新保 雄司≫