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高年齢者雇用安定法の改正(70歳までの就業機会の確保)

1.高年齢者雇用安定法の改正趣旨及び施行日

少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者が年齢にかかわりなくその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、令和3年4月1日から施行されます。

 今回の改正は、個々の労働者の多様な特性やニーズを踏まえ、70歳までの就業機会の確保について法制度上多様な選択肢を整え、事業主として一定の就業確保措置を導入する努力義務を設けるものであり、定年を70歳へ引き上げること等を義務付けるものではありません

2.高年齢者雇用確保に関する現行制度

現行の高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用機会を確保するため、事業主に対し、高年齢者雇用確保措置(①65歳までの定年の引上げ、②65歳までの継続雇用制度の導入、又は③定年制の廃止のいずれか)を講ずることを義務付けています。

なお、②の継続雇用制度に関し、平成24年度の高年齢者雇用安定法の改正により、平成25年以降、雇用継続制度の適用者は原則として「希望者全員」となりました。この点、平成25年3月31日までに労使協定により雇用継続制度の適用対象者を限定する基準を定めていた場合には、平成24年度改正法の経過措置として、当該基準を踏まえた対応が可能であるものの、当該基準を適用できる年齢を令和7年3月31日までに段階的に引き上げる必要があるとされています。

3.高年齢者雇用確保に関する改正の概要

今回の改正は、65歳から70歳までの高年齢者の就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置として、事業者に対し以下の①から⑤のいずれかの措置を講ずる努力義務を設けるものです。なお、以下のうち、④及び⑤(創業支援等措置)に関しては、労働者の過半数を代表する者等の同意を得たうえで実施する必要があります。

① 70歳までの定年の引上げ

② 70歳までの継続雇用制度の導入(子会社・関連会社等の特殊関係事業主に加え、他の事業主によるものを含む)

③ 定年制の廃止

④ 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤ 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に、

 a. 事業主が自ら実施する社会貢献事業に従事できる制度の導入

 b. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入

4.まとめ

今回の改正は、70歳までの雇用確保を義務付けるものではなく、あくまで努力義務を定めるものではありますが、少子高齢化が加速する中で、事業者においては高年齢者の雇用を積極的に推進することがますます重要になります。上記の改正事項に関する詳細及びその他の改正事項については、以下の厚生労働省のホームページをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1_00001.html

≪弁護士 吉浦 くにか≫