社債の利息に関する利息制限法の適用の有無を判示した最高裁判決
利息制限法は、「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約」において、一定割合を超えるときはその超過部分について無効と規定しています(第1条)。個人でも法人でも、この制限利率を超えて借入金利息を返済した場合には過去に遡って不当利得としてその超過利息の返還を請求できるのですが、あくまでも金銭消費貸借契約に基づく借入金の利息であることが前提となります。
他方、会社においては、資金調達目的で社債を発行することができ、この社債は、「(会社法)の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、第676条各号に掲げる事項についての定めに従い償還されるものをいう。」と定義されており(会社法第2条23号)、通常は利息の定めもなされることから、一般の金銭消費貸借契約における貸金債権と類似しています。特に、会社が経済的に窮状に陥りどうしても資金調達が必要であるが、金融機関から融資を受けられない状況下において、利息制限法の制限を超えた利率の利息を定めた社債を引き受ける社債権者がいる場合、当該会社が存続のためやむなくその条件で社債を発行して資金調達をするケースも想定でき、そのような場合に貸金と同様の保護が必要ではないかという価値判断もあり得るところです。
この点、令和3年1月26日、最高裁判所第三小法廷が社債に対する利息制限法の適用の有無について判断をしました。結論としては、社債の発行には会社法上さまざまな手続が必要とされ、金融商品取引法第2条1項に規定する有価証券として同法の規制に復することにより、公正な発行等を図るための措置が講じられており、また、社債については、発行会社が事業資金を調達するため必要とする資金の規模やその信用力等を勘案し、自らの経営判断として募集事項を定め、引受けの申込みをしようとする者を募集することが想定されており、会社の資金調達に重要な役割を果たしていることを重視し、利息制限法の適用を否定したものです。
しかし、社債の形式をとればどのような場合でも利息制限法の適用を免れるわけではなく、「社債の発行に仮託して、不当に高利を得る目的で当該会社に働きかけて社債を発行させるなど、社債の発行の目的、募集事項の内容、その決定の経緯等に照らし、当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情がある場合には、このような社債制度の利用の仕方は会社法が予定しているものではないというべき」であり、むしろ「主として経済的弱者である債務者の窮迫に乗じて不当な高利の貸付けが行われることを防止する趣旨から利息の契約を制限した」という利息制限法の趣旨が妥当するとして、そのような特段の事情があれば社債にも利息制限法第1条の規定が適用される可能性があることに言及していることは注視すべきです。
この最高裁判決の詳細は、最高裁判所のホームページに表示されていますのでご参照ください。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89968
≪弁護士 平石孝行≫