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【ニュース】労働者派遣法が改正されました

平成27年9月11日に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」(改正労働者派遣法)が成立致しました。主な改正内容は以下のとおりです。

1 派遣事業の適正化(労働者派遣事業を許可制に一本化)

改正前は、一般労働者派遣事業(許可制)と特定労働者派遣事業(届出制)の2制度の区別がありました(特定派遣とは、一般派遣のように仕事があるときだけ雇用するのではなく、常時雇用される労働者、厳密には1年以上すでに雇用されている方、1年以上の雇用契約を結んでいる方、期間の定めのない雇用契約を結んでいる方を派遣するものです。)。

しかし、現行法では、特定労働者派遣事業を担う事業者が適正な運営を行っていない事例があったために、派遣事業の適正化を図る見地から、改正後は、全ての労働者派遣事業を許可制としたものです。

2 労働者派遣の位置付けの明確化(臨時的・一時的なものであること)

厚生労働大臣は労働者派遣法の運用に当たり、派遣就業が「臨時的・一時的なものであること」を原則とするとの考え方を考慮することになりました。

3 派遣労働者の雇用安定とキャリアアップ(雇用安定措置の義務化等)

 改正前には、派遣期間の上限で雇い止めになる事例が多く、雇用の継続が保証されていませんでした。しかし、上記2のとおり、派遣就業が「臨時的・一時的なものであること」を原則とはしながらも、派遣労働者の雇用安定を図る見地から、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップ、雇用継続を推進するため、以下の措置を講ずることとされました。

① 派遣労働者に対する計画的な教育訓練や、希望者へのキャリア・コンサルティングを派遣元に義務付けました。

② 派遣期間終了時の派遣労働者の雇用安定措置※(雇用を継続するための措置。3年経過時は義務、1年以上3年未満は努力義務)を派遣元に義務付けました。

4 より分かりやすい派遣期間規制へ(派遣期間規制-期間制限の見直し)

改正前は、いわゆる26業務以外の業務に対して原則1年(最長3年)の期間制限がされていました。現行法では、専門業務等のいわゆる「26業務」には期間制限がかからず、その他の業務には(最長3年の期間制限がかかっていました。しかし、26業務であるかどうかの区別が困難なこともあり、26職種かどうかで期間制限が異なる制度は分かりにくいとの批判がありました。そこで、より分かりやすい制度とするためにこれを廃止し、新たに以下のよう新たに以下の制度を設けることにし、事業所単位、個人単位で最長3年の期間制限を設けることとしました。

① 事業所単位の期間制限: 派遣先の同一の事業所における派遣労働者の受入れは3年を上限とする。それを超えて受け入れるためには過半数労働組合等からの意見聴取が必要。意見があった場合には対応方針等の説明義務を課す。

② 個人単位の期間制限: 派遣先の同一の組織単位(課)における同一の派遣労働者の受入れは3年を上限とする。

5 派遣労働者の均衡待遇の強化

派遣元と派遣先双方において、派遣労働者と派遣先の労働者の均衡待遇確保のための措置を強化する。

6 検討規定

なお、施行3年後の見直し検討に加え、正社員と派遣労働者の数の動向等を踏まえ、能力の有効発揮と雇用安定に資する雇用慣行が損なわれるおそれがある場合は速やかに検討を行うこととし、均等・均衡待遇の確保の在り方を検討するため調査研究その他の必要な措置を講ずることになりました。

その他の改正内容は、厚生労働省の以下のホームページをご参照ください。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386.html

7 改正法成立に至るまでの過程等「三度目の正直」での成立

改正案は、昨年通常国会と臨時国会に提出され、条文や配付資料のミスや衆議院の解散総選挙のためにいずれも廃案となっていたところ、この度3度目の正直で成立に至りました(6月19日に衆議院通過した後、日本年金機構の個人情報流出問題等の影響で参議院での審議が停滞し、当初の施行日(9月1日)までに成立せず、施行日を9月30日に修正し、衆議院に戻し9月11日に成立に至ったものです。そして成立日から施行日(9月30日)まで僅か3週間弱しかないため、厚生労働省のパブリックコメント(意見公募)の期間が異例の3日間という短期間となり、意見公募を締め切った日の翌日(18日)に政省令案がまとめられるという異例の経緯を辿りました。こうした経緯を辿ったのは、平成24年の労働者派遣法の改正で新設された「労働契約申し込み『みなし制度』」(派遣先が違法派遣であることを知りながら、また、知らなくても知らなかったことにつき過失がありながら、派遣労働者を受け入れている場合、違法状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対し、派遣労働者の派遣会社における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込み(直接雇用の申込み)をしたものとみなされ、派遣労働者が申込を承諾した場合、派遣先は派遣元と派遣労働者が契約している雇用条件と同一条件で雇用しなければならない制度)が10月1月から施行されるため、その前に今回の改正法の施行を急いだとも考えられます。ただ、こうした過程はさておき、今回の改正法は9月30日に施行されることが確定しており、事業者においては早急な対応が求められることから、本トピックスにおいて取り上げた次第です。