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認知症の高齢者による線路立入に関する遺族への損害賠償請求事件控訴審判決(名古屋高裁平成26年4月24日)について

認知症により責任能力を失っていた高齢者が鉄道の駅構内の線路に立ち入り、通過する列車と衝突して死亡した事故に関して鉄道会社がその被った経済的損害について遺族に対し、監督義務違反の過失があったことを理由として、損害賠償を請求した訴訟において、名古屋高等裁判所は、平成26424日、長男に対しては請求を棄却し、妻に対しては、民法7141項による損害賠償責任を肯定した上、賠償すべき額を損害の半額とする判決を下しました。(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140512142523.pdf

民法7141項は、責任無能力者が不法行為責任を負わない場合において、その責任無能力者の監督義務者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う旨、及び、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは賠償責任を免れる旨を規定しています。

上記名古屋高等裁判所の判決は、「監督義務は、原則として責任無能力者の生活全般に及ぶ」、「監督期間において責任無能力者に加害行為があった場合には監督義務者等の監督上の過失が事実上推定されることになる」、「民法714条の規定は…責任無能力者の生活全般に対する一般的な監督義務上の過失(責任無能力者のした具体的な加害行為との関係では間接的過失)で足りるものとする点で、無過失責任主義的な側面を強く有する規定であり、…監督義務者等に対し、責任無能力者の加害行為によって生じた損害について責任無能力者に代わって賠償責任を負わせる面(代位責任的な面)のある規定である」と述べ、妻について監督義務者であることを認めた上で、妻が出入口のセンサーの電源を切ったまま居眠りしてしまったことについて監督義務を怠ったとして損害賠償責任を認めました。

本判決は、新聞等でも広く報道され、介護の現場を知らないとの厳しい意見も見受けられました。筆者も、認知症の親族と同居していたことがありますが、家族が並々ならぬ注意を払っても徘徊することを完全に防ぐのは非常に困難であるとともに、認知症患者にも人間的な生活をさせてあげたいジレンマを常に抱えておりました。徘徊した先がたまたま線路であったことをもって多額の損害賠償義務を負うというのは心情的に理解しにくいものがあります。

筆者としては、認知症の方が線路に立ち入ってしまったことを鉄道会社に対する「加害行為」であるとする判断に違和感を覚えますが、皆様はいかがでしょうか。

以上