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【ニュース】独占禁止法相談事例集(平成30年度)の公表と実務対応

 公正取引委員会では、独占禁止法違反行為の未然防止と、事業者の適切な事業活動に役立てさせることを目的として、毎年、公正取引委員会に寄せられた個別相談事例等の概要を取りまとめた「相談事例集」を公表していますが、2019年6月26日、平成30年度の相談事例集が公表されました。https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/jun/190626soudanjireisyu.html 

  独占禁止法では、不当な取引制限(第2条第6項)、私的独占(第2条第5項)及び不公正な取引方法(第2条9項各号)等の行為が禁止されていますが、禁止行為の具体的内容については、独占禁止法のほか、公正取引委員会の指定(昭和57年公取委告示第15号等)や、多岐にわたる指針・ガイドラインによりその内容が定められています。

 また、これらの指針・ガイドラインも、事業者が遵守すべき法規範として位置付けられるものであるため、その内容は幅のある記載となっており、現に検討している取引・契約内容が独占禁止法に抵触するものであるか否かを判断することが容易でない場合があります。他方で、独占禁止法への抵触の有無について十分な検討を行わないまま取引・契約を行い、これが後日独占禁止法に抵触するものと判断された場合、排除措置命令や警告を受けるおそれがあることに加え、その旨が公表されることによる企業イメージの低下も看過できません(平成30年度の独占禁止法違反事件の処理状況については、末尾記載のURLをご参照下さい。)。

 相談事例集は、実際に公正取引委員会に寄せられた個別事案に係る相談内容及びこれに対する公正取引委員会の回答をベースに作成されたものであるため、独占禁止法や指針・ガイドラインのみからは必ずしもその適法性が明らかとならない行為の法適合性について、その予測可能性を担保する一助となるものです。

 平成30年度の相談事例集を見ると、デジタルエコノミーという経済情勢を踏まえた相談事例(相談事例1、2及び5)や、人手不足により厳しい労働環境に置かれている運送業界のドライバーの労働環境の改善や効率的な輸送の実現を目的とする政策に関する相談事例(相談事例8)等、近時の情勢を踏まえた相談事例が多く見受けられます。

 当事務所では、事業者の方が検討している取引・契約内容が、これらの規制に抵触するリスクがあるかどうかのご相談はもちろん、仮にリスクが存在する場合は、当該リスクを払拭するための手段・対策の検討に関わるご相談にも対応させて頂いておりますので、是非お問合せ下さい。

平成30年度における独占禁止法違反事件の処理状況についてhttps://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/jun/190605.html 

《弁護士 石井林太郎》