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「民法等の一部を改正する法律案」の概要について

弁護士新保 雄司

離婚後の成年に達しない子について父母に共同親権を認めること等を内容とする「民法等の一部を改正する法律案」(以下「民法等改正案」といいます。)が第213回国会に提出されました。民法等改正案の内容に関する法務省Web頁の該当URLは以下の通りです。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00348.html

今般の民法等改正案は、離婚後の共同親権以外にも親族法に関する重要な改正が含まれております。民法等改正案の主な内容は以下の通りです。

  • 親権は子の利益のために行使しなければならないことを法文上明記する。
  • 親権の行使は原則として父母が共同して行うものとするが、父母は双方が親権者であっても監護及び教育に関する日常の行為にかかる親権の行使を単独ですることができるものとする。特定の事項について家庭裁判所は一方の親権者が単独で親権を行使できることを定められるものとする。
  • 協議離婚の場合には、父母の双方または一方を親権者と定める。
  • 裁判上の離婚の場合は、家庭裁判所が父母の双方または一方を親権者と定める(但し、子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるときや、DV等のおそれにより父母双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、一方を親権者とする)。
  • 親権者の指定を求める家事審判・家事調停の申立てがされていれば、親権者の定めがされていなくとも離婚届が受理されるものとする。
  • 協議離婚において離婚後の子の監護の分掌に関する事項を協議で定めうることを法文上明記し、監護者については親権者と同一の権利義務を認めるとともに単独で監護・教育、居所の指定等を行う権限を有するものとする。
  • 子の監護の費用について一般の先取特権を認め、債務者の給与債権に関する情報提供命令・財産開示手続に関する民事執行法上の規定が整備される。
  • 子の監護の費用の分担について定めずに協議離婚した場合に、監護を行う者に法務省令で定める一定額の支払い請求権を認める。
  • 家庭裁判所は父母以外の親族と子との交流を定めることができるものとする。
  • 婚姻期間中の、子と別居する父または母と、子との交流に関する規定が整備される。
  • 判決前・審判前・調停前の親子交流の試行的実施に関する規定が整備される。
  • 養親の配偶者を親権者とする。
  • 財産分与の請求期間を5年に伸長する。
  • 財産分与の要否・額・方法について考慮すべき要素を例示列挙するとともに、寄与の程度が異なることが明らかではない場合の寄与は相等しいものと推定する。
  • 夫婦間契約の取消権が削除される。
  • 子の監護費用の分担に関する処分または財産分与に関する処分、婚姻費用の分担の申立てがされている場合等における、裁判所による収入及び資産に関する情報の開示命令の規定が整備される。
  • 親権行使者の指定の審判・調停事件の管轄権に関する規定が整備される。

社会に与える影響が大きい改正ですので、民法等改正案の今後の国会審議の推移を注視して参りたいと存じます。