【ニュース】民事執行法制の見直しに関する要綱案の決定
平成30年8月31日開催の法制審議会民事執行法部会において民事執行法制の見直しに関する要綱案が決定されました。詳細は以下のウェブサイトをご参照ください。
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900372.html
同要綱案では、債務者財産の開示制度の実効性の向上、不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策、子の引渡しの強制執行の規律の明確化など、強制執行に関する多岐にわたる事項が改正の対象となっています。その中でも特に注目されるのは、債務者財産の開示制度の実効性の向上です。債権者が、訴訟で勝訴しても、債務者の財産を把握していなければ強制執行により回収することは困難であるため、債務者に対して権利を有しているにもかかわらず、事実上権利行使できないという事態に陥ることがあります。そのため、特に金銭債権の強制執行の実効性を確保することを目的として、平成15年に民事執行法が改正され、債務者財産を債務者自身に開示させる財産開示手続が新しく創設されましたが、実施要件が厳しく、かつ手続違背に対する制裁も弱く、実効性が必ずしも十分でないとの批判がありました。こうした批判を踏まえて、今回の要綱案では、債務者財産の開示制度の実効性の向上を図るための制度として、第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度(例えば、一定の債権者について、裁判所が、市町村に対して、債務者の給与に関する情報を提供するように命じることができる制度)を新設することが盛り込まれました。この債務者財産開示のための新しい制度の創設により、現在よりも債権者が債務者の財産を把握しやすくなり、民事執行手続がより実効的なものになることが期待されています。
今後、国会等での審議が行われていくと思われますが、民事執行手続が現在の制度よりも使いやすく、実効性のあるものに改正されるのか注目されます。