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外為法 対内直接投資等の事前届出に関する改正

弁護士荒内 智美

外為法に関連して、「対内直接投資等に関する政令の一部を改正する政令」が令和7年4月1日に閣議決定され、令和7年4月4日に公布されました(令和7年5月19日施行予定)。

対内直接投資の審査制度とは、対外取引自由を原則としつつも対外取引に対する必要最小限の管理調整を行う観点から、外国投資家が、一定の業種(「指定業種告示」により事前届出が必要なものとして定められた特定の業種。「指定業種」)に対して行う対内直接投資等につき、事前に、事業目的、金額、実行時期等を財務大臣及び事業所管大臣に届け出ることを求める制度です(外為法第27条)。この制度には、経済の健全な発展につながる対内直接投資を促進する観点で、一定の基準が遵守される場合には、事前届出の免除制度が設けられています。

本改正により、外国為替及び外国貿易法(外為法)の対内直接投資の事前審査の免除制度の範囲及び要件が見直されることとなりました。

本改正では、「特定外国投資家[1]」及び「特定外国投資家に準ずる者[2]」という新たなカテゴリーが設けられました。これらに該当する場合には、事前届出の免除が認められず、又は、免除要件が加重されることとなりました。

具体的には、「特定外国投資家」は、指定業種につき、上場会社の株式・議決権の取得(うち取得後比率が1%以上)をする場合又は非上場株式を取得する場合等には、免除制度の利用ができなくなり、事前届出が必要となります。また「特定外国投資家に準ずる者」は、指定業種につき、上場会社の株式・議決権の取得(うち取得後比率が1%以上)をする場合、いわゆるコア業種[3]の一部について免除制度の利用ができなくなり、また免除制度を利用できるコア業種についても、免除要件が加重されるといった改正がなされました。

詳しくは、以下をご覧ください。

・財務省 関係資料(概要)

relateddocument_20250331_1.pdf

・対内直接投資等に関する政令等の改正(令和7年4月4日公布)に係るQ&A

relateddocument_20250404_1.pdf

改正前は免除制度の対象であった外国投資家であっても、「特定外国投資家」又は「特定外国投資家に準ずる者」に該当することにより、免除が受けられない又は免除につき要件が加重されるという可能性があり、この該当性判断は評価の問題も含むところであり、事前の慎重な判断が要求されます。

また、「特定外国投資家」の定義に関する、情報収集義務を課す外国の法令については、報道では中国の法律が念頭に置かれていると言われているところ、対日投資が増加傾向にある昨今、本改正の適用場面も増加することが見通され、いっそうの留意が必要です。

当事務所では、インバウンド関係の法律相談も随時受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

≪弁護士 荒内智美≫


[1] 「特定外国投資家」は以下のいずれかに該当する者をいいます。

①外国政府等との契約又は外国の法令その他これに類するものに基づき、当該外国政 府等による情報収集活動に協力する義務を負う個人又は法人その他の団体(以下「情 報収集義務者」という。)

② 情報収集義務者及び当該情報収集義務者に対して上記の義務を課す外国政府等が以 下のいずれかに該当する関係を持つ法人その他の団体

1.議決権、株式数又は出資金の額の50%以上を占める法人その他の団体

2.役員又は役員で代表権を有するものの1/3以上を占める法人その他の団体(外国政 府等又は情報収集義務者に指名・任命された者も算入)

3.拒否権付株式(黄金株)を保有する法人その他の団体

4.対内直接投資等又は特定取得に係る議決権の行使について指図権を有する法人その 他の団体

[2] 「特定外国投資家に準ずる者」は、以下のいずれかに該当する者をいいます。

・情報収集義務者が実質的な意思決定を掌握していると認められる者

・設立準拠国以外の国や地域に実質的な本社があり、情報収集活動に関する当該国の法令等の影響を受ける者

・情報収集義務者等との契約、又は当該契約を行った者との契約(さらに同様の契約が連なる場合、それらの各契約を含む)により、外国政府等の情報収集活動に協力するため情報を開示する義務を負う者

[3] 指定業種のうち、武器、原子力、電力、通信等の国の安全等の観点から慎重な取り扱いが必要な業種として、財務大臣及び事業所管大臣の告示で別途定められている業種