蛍光灯生産終了に伴う照明器具交換費用負担と建物賃貸借契約について
2023年11月の「水銀に関する水俣条約第5回締約国会議」において全ての一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入の廃止が2027年末とされ、これを受けて、2024年12月24日、蛍光灯の製造や輸出入を2028年1月までに禁止する水銀規制の政令改正が閣議決定されました。
当該閣議決定に関する経済産業省のWEBサイトは次の通りです。
「水銀による環境の汚染の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました (METI/経済産業省)
蛍光灯については水銀に関する水俣条約第5回締約国会議の決定を受けて既に国内大手メーカーにおいても(パナソニック及び東芝ライテックは2027年9月末までに、ホタルクスは2027年12月までに)生産終了が予定されています。
他方、既存建物の照明器具は順次LEDに置き換わってきてはおりますが、未だ、蛍光灯が使用されている建物は多数存在し、今後これらの照明器具の交換が必要となるものと考えられます。
このLED照明器具への交換費用ですが、賃貸物件のオフィスビルや居住用等の建物の場合、賃貸人・賃借人のいずれが負担するべきものかが議論になる場合もあるかと思われます。
賃貸人・賃借人のいずれの費用負担となるかにつきましては、建物賃貸借契約の契約内容(合意内容)によるということになりますが、基本的には照明器具自体が誰の所有物かにより、その所有者が照明器具の交換費用を負担するということになるものと考えられます。
この点、よく見かけるオフィスビルの賃貸借契約の例としては、照明器具を含む内装も賃貸人側所有となっているものの、照明器具の蛍光灯が切れた場合等消耗品(蛍光灯)の交換は賃借人の負担とするといった契約となっているものがあります。
このような契約内容の場合、今回の蛍光灯製造中止にあわせた照明器具本体の交換は消耗品である蛍光灯の交換と同種の消耗品交換とは解し難く、照明器具の所有者である賃貸人が費用を負担するべきものと考えられます。
他方、照明器具が賃貸物件に附属しておらず、賃借人において別途用意するものとされている契約(居住用建物の賃貸借契約などに多くみられ、また、オフィスビルの賃貸借契約においても照明器具を含む内装一式が全て賃借人の工事となっており、契約終了時の原状回復に際しては所謂スケルトンにして返還することとなっているような契約の場合)となっている場合、照明器具の交換費用も賃借人が負担するべきものと考えられます。
蛍光灯の製造・輸出入の終了に伴い、照明器具の交換を要する建物については、誰がその費用負担をするものか、一度お手許の建物賃貸借契約書の内容をご確認頂き、費用を負担する必要のある当事者においては計画的な交換手配を要するものと考えられます。
以上