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不動産取引における「囲い込み」の規制について

弁護士山口 源樹

改正宅地建物取引業法施行規則(以下、「施行規則」といいます。なお、宅地建物取引業法については、以下、「法」といいます。)及び通達が令和7年1月1日から施行されます。
これにより、宅地建物取引業者(以下、「宅建業者」といいます。)による「囲い込み」と呼ばれる行為が規制されることとなりました。

1 「囲い込み」とは?
「囲い込み」とは、売主と媒介契約(いわゆる「仲介契約」)を締結した宅建業者が、自ら買主を見つけ、買主からも仲介手数料を得ること(いわゆる「両手仲介」)を目的として、物件情報を開示しなかったり、虚偽の情報を公開することで、他の宅建業者に契約をさせないようにする行為を指します。

具体的には、宅建業者は、売主との間で専任媒介契約を締結したときは、7日間(ただし専属専任媒介契約の場合は5日間)以内に、指定流通機構が運営するシステムである「レインズ」に所定の物件情報の登録をしなければなりませんが(法第34条の2第5項、施行規則第15条の10、同第15条の11)、かかる登録を(すぐに)行わなかったり、事実と異なる情報を入力するなどして(例えば、「レインズ」においては、登録物件の取引状況について「公開中」、「書面による購入申込みあり」又は「売主都合で一時紹介停止中」とのステータス表示ができるところ、事実に反して「売主都合で一時紹介停止中」とのステータスを表示させるなど。)、買主側の宅建業者から当該物件に関する申し込みをさせず、その間に自ら買主を見つけてくるという行為が行われることがあるのが実情です。

このような「囲い込み」で、取引が宅建業者の独占的な管理下で行われることにより、売主において本来得られるはずの有利な条件での取引機会を奪うことになるだけでなく、市場の健全な競争が阻害されることなどが指摘されていましたが、他方でこの点に対する罰則の適用の有無が明確ではないことが問題視されていました。

2 改正の概要
改正の概要は以下のとおりです。
(1)施行規則について
法は、レインズに登録しなければならない物件情報として、物件の所在、規模、形質、売買すべき価額、その他国土交通省令で定める事項について登録するよう定めています(法第34条の2第5項)。
また、国土交通省令で定める事項については、現行の施行規則第15条の11は
・ 当該宅地又は建物に係る都市計画法その他の法令に基づく制限で主要なもの
・ 当該専任媒介契約が宅地又は建物の交換の契約に係るものである場合にあっては、当該宅地又は建物の評価額
・ 当該専任媒介契約が専属専任媒介契約である場合にあっては、その旨
の3点について登録を行うよう定めていましたが、本改正により、新たに
・ 当該宅地又は建物の取引の申込みの受付に関する状況
についても登録を行わなければならないものと定められました(改正施行規則第15条の11第2号)。

(2)通達について
また、通達である「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に関しても、以下の改正が行われました。

宅建業者が媒介契約締結に先立ち依頼者へと周知すべき事項について、従前定められていた「宅地建物取引業者が依頼物件を指定流通機構に登録した場合は、当該宅地建物取引業者から指定流通機構が発行する登録済証の交付を受けること等により、登録されたことを確認すること。」という点に加え、「レインズ…のステータス管理機能を通じて当該依頼物件に係る取引の申込みの受付に関する状況等の最新の登録内容を確認すること」についても周知を行うよう定められました。

また、売主に対するレインズの登録証明書の交付時における説明に関して、以下の記載が追加されました。
「宅地建物取引業者は、指定流通機構に物件を登録したときは、登録証明書を交付する際に、レインズのステータス管理機能を通じて当該物件に係る取引の申込みの受付に関する状況等の最新の登録内容が確認できることに関し、依頼者に対して分かりやすく説明を行うことが望ましい。
なお、宅地建物取引業者が専属専任媒介契約及び専任媒介契約に基づき指定流通機構に登録した物件について、当該物件に係る取引の申込みの受付に関する状況等の登録内容が事実と異なるときは、法第65条第1項の指示処分の対象となる。」

以上の改正については、以下の国土交通省のHPについてもご確認ください。
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html

3 まとめ
本改正により、特に取引の申込みの受付に関する状況等の登録内容が事実と異なる場合について、これが罰則の対象となることが明示されたことは実務上重要な点かと思われます。

当事務所では、本改正に関するご質問はもちろん、その他の幅広いご相談にも対応しております。宅建業者の方や不動産取引に関わる方々で、お悩みや疑問がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

≪弁護士 山口 源樹≫