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消費者契約法の改正案が国会に提出されました。

弁護士山口 源樹

令和4年3月1日、消費者契約法(及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律)の一部を改正する法律案(以下、消費者契約法の一部を改正する法律案を単に「改正案」といいます。)が国会に提出されました。

ポイントについては以下のとおりですので、成立・施行に備えご確認ください。

1.取消権に関する事項の追加

消費者契約法第4条第3項では、事業者が、消費者契約の締結について勧誘するに際し一定の行為をしたことによって、消費者が困惑し、それによって当該消費者契約の申込又はその意思表示をしたときに、消費者に特別の取消権を認めています(消費者契約法第4条第3項参照)。

改正案では、同項が定める行為について、新たに以下が追加されています。

・勧誘することを告げずに、当該消費者が任意に退去困難な場所へ同行し勧誘する行為(改正案同項第3号)

・勧誘を受けている場所において、当該消費者が相談を行うために当該事業者以外の者と連絡する旨の意思表示をしたにもかかわらず、威迫する言動を交え、連絡を妨げる行為(改正案同項第4号)

・契約前に当該消費者契約の目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にする行為(改正案同項第9号)

2.解約料の説明の努力義務

改正案では、消費者契約における解約料等の定めにつき、以下のとおり、事業者の説明義務(努力義務)に関する定めが新設されました。

・消費者契約の解除に伴う損害賠償額を予定し、又は違約金を定める条項に基づき損害賠償又は違約金を請求する場合において、当該消費者から説明を求められたときに、その算定根拠の概要を説明する義務(改正案第9条第2項)

・消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項におけるこれらを合算した額が平均的な損害(消費者契約法第9条第1項)を超えると疑うに足りる相当な理由がある場合における適格消費者団体からの説明要請(改正案第12条の4第1項)に応じる義務(改正案第12条の4第2項)

3.免責の範囲が不明確な条項の無効

消費者契約法第8条第1項各号では、事業者の債務不履行責任の全部免除条項、事業者の故意・重過失による債務不履行責任の一部免除条項等、消費者契約における事業者の損害賠償責任を免除する条項について無効とする場合について定めています。

改正案では、軽過失による損害賠償責任の一部を免除する条項であっても、軽過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていない不明確な一部免責条項については、消費者の損害賠償請求を困難にするとして無効とする旨の定めが新設されました(改正案第8条第3項)。

この点については、例えば「軽過失の場合は1万円を上限として賠償します」という条項は有効である一方で、「法令に反しない限り、1万円を上限として賠償します」という条項は無効となると考えられています。

4.事業者の努力義務の拡充

改正案では、以下のとおり、消費者契約に関連して事業者が負う努力義務が拡充されています。

・契約締結時だけでなく、解除時についても努力義務を導入

※当該消費者契約において定められた解除権の行使に関して必要な情報を提供する義務(改正案第3条第1項第4号)、解約料に関する算定根拠の概要を説明する義務(改正案第9条第2項)

・勧誘時の情報提供において、事業者が知ることができた個々の消費者の年齢、心身の状態、知識及び経験を総合的に考慮し必要な情報を提供する義務(改正案第3条第1項第2号)

・定型約款の表示請求権(民法第548条の3第1項)を行うために必要な情報を提供する義務(改正案第3条第1項第3号)

・適格消費者団体の各種要請に対応する義務(改正案第12条の3から5)

詳細については、第369回消費者委員会本会議における配布資料(第369回 消費者委員会本会議 : 消費者委員会 – 内閣府 (cao.go.jp))をご確認ください。

当事務所では、上記改正を踏まえたご相談にも対応しております。お悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

≪弁護士 山口源樹≫