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改正薬機法における課徴金制度の施行

弁護士石井 林太郎

2019年12月に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「薬機法」といいます。)が改正され、2020年4月1日、同年9月1日と段階的に施行がなされてきましたが、2021年8月1日に課徴金制度(薬機法75条の5の2~75条の5の19)が施行されました。

薬機法では、虚偽・誇大広告(薬機法66条1項)に対して、措置命令(72条の5第1項)、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金(併科あり)という罰則制度が定められていましたが、現行の行政処分・罰則によっては違反行為に対する抑止効果が機能しにくい実態があったことを踏まえ、虚偽・誇大広告により得られた不当な経済的利得を徴収し、違反行為者がそれを保持し得ないようにすることによって違反行為の抑止を図り、規制の実効性を確保するための措置として、課徴金制度が創設されました。

なお、下記の制度概要で述べるとおり、薬機法の虚偽・誇大広告が同時に景表法上の表示規制に抵触して同法の課徴金対象行為にもなる場合には、課徴金額の調整がなされます。

課徴金制度の概要は以下のとおりです。

(1)対象行為:医薬品、医療機器等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する虚偽・誇大な広告

※ 虚偽又は誇大であるかどうかの判断は個々の事例ごとに行われますが、「医薬品等適正広告基準」や「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」といった通達等において、判断・指導の基準が一定程度明記されています。

※ 対象となる取引は薬機法等に基づく業の許可を受けた者等が行う取引に限られないため、既に市場に出荷されている化粧品や医薬部外品を販売する者も含まれます。他方、新聞社、雑誌社、放送事業者、インターネット媒体社等の広告媒体事業者及びこれら広告媒体事業者に対して広告の仲介、取次ぎをする広告代理店、サービスプロバイダー等が行う取引は含まれません(「課徴金納付命令に係る対価合計額の算定の方法に関するQ&Aについて」)。

(2)課徴金額:原則、違反を行っていた期間中における対象商品の売上額×4.5%

※ 具体的な売上(対価合計額)の算定方法については、令和3年7月6日付で通達が出されています(「課徴金納付命令に係る対価合計額の算定の方法について」)。

※ 課徴金額が225万円(対象品目の売上げ5000万円)未満の場合は、課徴金納付命令の対象外となります。

(3)課徴金の減額

※ 同一事案に対して景表法に基づく課徴金納付命令がある場合は、売上額×3%(景表法の課徴金算定率)が控除されます。

※ 課徴金対象行為に該当する事実を、事案発覚前に違反者が自主的に報告したときは50%が減額されます。

(4)除斥期間:違反行為終了日から5年を経過したときは、課徴金は賦課されない

薬機法の課徴金制度の対象となる医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器等は、治療や予防、人体に対する作用を緩和する性質のものであるため、そもそも承認された効果・効能しか謳うことはできず、広告可能な範囲は自ずと限定的なものとなりますので、医薬品等の広告内容を検討するに際しては十分にご注意下さい。

2019年改正薬機法の概要:https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000665345.pdf

課徴金制度の概要:https://www.mhlw.go.jp/content/000609186.pdf

医薬品等適正広告基準:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179264.pdf

医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf

課徴金納付命令に係る対価合計額の算定の方法に関するQ&Aについて:

https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000817051.pdf

課徴金納付命令に係る対価合計額の算定の方法について:

https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000817050.pdf

≪弁護士 石井林太郎≫