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ワクチン接種に関するハラスメントについて

弁護士青野 瑞穂

我が国においても新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が本格的に進められていますが、同時に、ワクチン接種に関するハラスメント、いわゆる「ワクチンハラスメント」問題も多発しています。

ワクチン接種は感染症の緊急のまん延予防の観点から実施するものであり、国民の接種については、「接種を受けるよう努めなければならない」という努力義務が規定されているに留まります(予防接種法第9条)。つまり、接種は誰から誰に対しても強制できるものではなく、あくまでも、一人一人が自由な意思に基づき接種するか否かを決定する性質のものになります。

そのため、企業においては、従業員がワクチン接種をしていないことを理由とする解雇、退職勧奨、いじめなどの差別的な扱いをすることは許されず、また、従業員に対し、ワクチン接種を強制・同調するように圧力をかけること、不必要に接種しない理由を聞くこと、接種の有無を聴取しその結果を公表すること等も問題となり得ます。

これらの行為はいずれも企業が従業員に対し損害賠償支払義務を負う根拠となり得るものですので、注意が必要です。

もっとも、社内の具体的な感染症対策を検討するため、従業員のワクチン接種率を把握する必要性を感じておられる企業の皆様も多いことと思われます。

従業員からワクチン接種の有無を聴取する際には、聴取の目的(社内の感染症対策の検討・効率向上のため等)を明確にした上で、従業員の任意による回答を得る方法を採る必要があり、取得した情報の管理も徹底しなければなりません。特に、回答や接種を強制、又は実質的に強制していると思われるような方法にならないよう注意が必要です。

以上のとおり、ワクチン接種に関する従業員対応については極めて慎重な検討・判断を要しますため、対応に迷われた際には是非一度ご相談ください。

参考:厚労省HP

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html#Q1-15

≪弁護士 青野瑞穂≫