電子契約サービスに関するQ&A
新型コロナウィルスの感染拡大措置の一環としてすでに多くの企業が事務の効率化を進め、捺印形式で作成していた契約書類についても、紙媒体から電子媒体への移行に試行錯誤をしているようです。
実はすでに「電子署名及び認証業務に関する法律」(以下「電子署名法」といいます。)が2001年4月1日に施行されており、電子署名が手書きの署名や押印と同等に通用する法的基盤が整備され、本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等は、真正に成立したもの(本人の意思に基づき作成されたもの)と推定されることになっています。そして、近年は、多くの事業者が電子契約サービスを提供して利用者の利便性の向上に貢献しており、一般財団法人日本情報経済社会推進協会による2017年の調査の時点で既に42.4%の組織において電子契約が何らかの形で採用されていると報告されています。2020年9月16日に菅内閣が発足してからは、全省庁の行政手続を対象に、押印廃止や書面・対面主義の見直しが始まっており、民間における電子契約化の流れも一気に加速することが予想されます。
しかし、民間事業者によって提供されている電子契約サービスの中には、法律上の「電子署名」の要件を充足しないものや、その該当性に疑義のあるものもあり、各利用者が業務の効率化と確実性(契約の有効性担保など)のバランスを考慮しつつどのサービスを採用するのかを決定することになります。新たなデジタル技術を用いたサービスの場合、既存の法律の要件に適合するか否か微妙な判断を迫られることが多いため、行政側も度々解釈指針を公表しています。本年6月19日に内閣府、法務省及び経済産業省が「押印に関するQ&A」を公表しておりますが、それに続き、総務省、法務省及び経済産業省が、本年7月17日に「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第2条第1項関係)」(https://www.meti.go.jp/covid-19/denshishomei_qa.html)を、本年9月4日に「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」(https://www.meti.go.jp/covid-19/denshishomei3_qa.html)をそれぞれ公表しました。これにより、そもそも各電子契約サービスにおいて採用されている電子的な署名が法律上の「電子署名」に該当するのか、これにより作成された電磁的記録(デジタル文書)が、法律上真正に成立したものと推定されるのかどうかの個別具体的な判断が容易になり、電子契約が急速に普及することが期待されます。