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【ニュース】スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議

弁護士小野 顕

金融庁と東京証券取引所の主催により、有識者による「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が始まっています。本年9月24日に第1回会議が、また10月20日に第2回会議が開催され、その会議資料、議事録等が公開されています。

http://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/index.html

当事務所ウェブサイトでもトピックスとしてそれぞれ取り上げさせていただきましたが、スチュワードシップ・コードは機関投資家の行動原則として昨年2月に策定され、またコーポレートガバナンス・コードは上場企業の行動原則として本年6月から適用が開始されたものです。両コードは、機関投資家と上場企業の建設的な対話に資するものとして「車の両輪」と位置づけられ、また、法規範類似の絶対的な遵守ではなく、日本においてはあまりなじみのなかった「コンプライ・オア・エクスプレイン」、すなわち「実施するか、実施しない場合にはその理由を説明する」との手法が採用されています。

なかでも、コーポレートガバナンス・コードは、「攻めのガバナンス」を標榜するとともに、2名以上の独立社外取締役の選任その他独立社外取締役の積極活用、取締役会評価、取締役会による後継者計画の監督等、日本の上場企業において必ずしも一般的ではなかった内容を盛り込んだものであり、日本の上場企業のガバナンス体制について大きな影響を与えつつあるとともに、またそれが故に、現時点では海外投資家からも基本的に高評価を得ていると言ってよいかと思います。東証一部・二部上場企業においては、6月総会会社であれば本年12月までに提出するコーポレート・ガバナンス報告書において、同コードの諸原則のうち11項目につき必須の開示が、また、全73原則につきコンプライしない場合の理由説明(エクスプレイン)が要求されることになっています。各企業により、既にかなりの件数の同コードに準拠したコーポレート・ガバナンス報告書、更には企業独自のコーポレートガバナンス・ガイドライン等が開示・公表されてきています。

本フォローアップ会議は、そのような状況の下で、開示事例やその他東京証券取引所の保有するデータを踏まえて両コードへの対応状況の実質について議論・検証するとともに、上場企業のガバナンスの更なる充実を図るため提言を行っていこうというもののようです。同会議での審議に活用するものとして、一般への意見募集も行われています。

http://www.fsa.go.jp/news/27/sonota/20150924-1.html

委員の発言等の詳細については、ウェブサイト上の公開議事録をご参照いただければと思いますが、会議資料として第1回会議及び第2回会議に提出されている東京証券取引所の取りまとめによるデータ

http://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20150924/04.pdf

http://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20151020/01.pdf

等、コードへの対応状況や上場企業の現状等のデータ自体も、今後を含めて参考となるのではないかと思われます。

また、既に第2回会議の開催日と同日付で、フォローアップ会議としての第1回目の意見書が提出されており、同意見書において、提出済みのコーポレート・ガバナンス報告書において見られる各原則の高いコンプライ率、すなわち、コンプライを所与のものとし、コンプライせずエクスプレインすることを躊躇する傾向について、コンプライしていない理由を積極的にエクスプレインする方が評価に値するケースも少なくないのではないかとの指摘、コンプライしつつ具体的な取組みについてエクスプレインしている事例が参考とされるべきとの指摘等が引用されていることも、特筆されてよいかと思います。

http://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/statements.pdf

なお、同意見書によれば、フォローアップ会議としては、コードの趣旨に照らして注意喚起をしておくことが適当と考えられる事項やベストプラクティスと考えられる事例等について、今後も機動的に意見書を公表していくとのことです。

このように、機関投資家と上場企業にそれぞれ適用される両コードの具体的運用についてまで、いわば官主導の「フォローアップ」を行うことの是非について議論もあろうかとは思いますが、これらコードの適用を受ける機関投資家と上場企業にとって、様々な意味で、今後注目に値する試みであるように思われます。