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覚醒剤密輸事件に関する最高裁決定について

被告人が覚醒剤を持ち込んだことの認識(知情性)に疑義があるとして1審(裁判員裁判)で無罪とされ、その後、控訴審で1審を破棄して有罪とされ、被告人が上告した覚醒剤密輸事件について、最高裁は「密輸組織が荷物の運搬の委托自体をせず、運搬者の知らない間に覚醒剤をその手荷物の中に忍ばせるなどして運搬させるとか、覚醒剤が入った荷物の運搬の委托はするものの、その回収方法について何らの指示等もしないというのは、密輸組織において目的地到着後に運搬者から覚醒剤を確実に回収することができるような特別な事情があるとか、あるいは確実に回収することができる措置を別途講じているといった事情がある場合に限られる。この種事案については、このような特段の事情がない限り、運搬者は、密輸組織の関係者等から、回収方法について必要な指示等を受けた上、覚醒剤が入った荷物の運搬の委托を受けていた者と認定するのが相当である。」などと判断し、また、控訴審の「そのほか、被告人の来日目的は本件スーツケースを日本に持ち込むことにあり、また被告人の渡航費用等の経費は密輸組織において負担したものと考えられるし、さらに、そのような費用をかけ、かつ、発覚の危険を犯してまで秘密裏に日本に持ち込もうとする物で、本件スーツケースに隠匿しうる物として想定されるのは、覚醒剤等の違法薬物であるから、被告人において、少なくとも本件スーツケースの中に覚醒剤等の違法薬物が隠匿されているかもしれないことを認識していたと推認できる。」とした判断について「推認過程や認定内容は合理的で誤りは認められない。」などと判断し、被告人の上告を棄却する決定をしました。

この最高裁決定は、被告人が覚醒剤を密輸した事実をもってただちに被告人の覚醒剤の知情性を推認するとまでは判断していませんが、今後の覚醒剤密輸事件の覚醒剤の知情性の判断に大きな影響を与えるものと考えられます。

判決文については、以下のWebサイトをご参照下さい。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83676&hanreiKbn=02