「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改訂について
平成14年3月、経済産業省(商務情報政策局)は、電子商取引、情報財取引等に関する様々な法的問題点について、民法をはじめとする関係する法律がどのように適用されるのかを明らかにすることにより、取引当事者の予見可能性を高め、取引の円滑化に資することを目的として、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を策定しました(当時の名称は、「電子商取引等に関する準則」)。その後度々改訂が繰り返されてきましたが、平成25年9月6日に最新の改訂がなされましたので、改訂ポイントをご紹介致します。なお、詳細は以下の経済産業省のHP をご参照ください。
http://www.meti.go.jp/press/2013/09/20130906006/20130906006.html
1 新たな裁判例に伴う修正
(1)パブリシティ権と表現の自由との関係
最高裁平成24年2月2日第一小法廷判決(ピンク・レディー事件)における判示内容が追加されました。すなわち、「肖像等に顧客吸引力を有する者は、社会の耳目を集めるなどして、その肖像等を時事報道、論説、創作物等に使用されることもあるのであって、その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もある」とし、「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為上違法となる」と判示しつつ、「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とする」典型的な類型として、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付する場合、及び③肖像等を商品等の広告として使用する場合が挙げられたことを紹介しています。
(2)インターネット販売におけるショッピングモール運営者による商標権侵害
知財高裁平成24年2月14日判決は、結論としてはネットショッピングモール運営者の出品商品に係る商標権侵害に対する責任を否定したものの、ネットショッピングモール出店者によって出店ウェブページに展示された商品が第三者の商標権を侵害している場合、一定の要件を満たすときにはネットショッピングモール運営者が商標権侵害の責任を負うことがあるとの一般論を示しており、モール運営者にも注意を喚起しています。
2 平成24年著作権法改正に伴う修正
(1)著作権法第30条の2において、いわゆる「著作物の写り込み」について、一定の場合に、写り込んだ事物又は音に係る他の著作物(軽微な構成部分となるものに限る)を当該創作に伴って複製又は翻案することができるものとされたことを受け、その概要が追加されています。
(2)著作権法第47条の9において、インターネット上で複製等を不可避的に伴うサービス開発・提供行為等に含まれる一定の著作物の利用行為等に関して、当該提供を円滑かつ効率的に行うための準備に必要な電子計算機による情報処理を行うときは、その必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案を行うことができるとされたことを受け、その概要が追加されています。
(3)著作権法第30条1項2号において、技術的保護手段の回避により可能となり又はその結果に障害が生じないようになった複製をその事実を知りながら行う場合には、許された私的使用のための複製にはあたらないとされたことを受け、その概要が追加されています。
3 その他の修正
以上