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【ニュース】不正競争防止法によるデータ保護

 平成30年5月23日、「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が可決成立し、同月30日に公布されました。本改正の中でも特に重要な「限定提供データ」制度(新設)の概要は以下のとおりです。

1.制度の概要

 流通・利活用が期待されているデータは、価値のあるデータであったとしても、必ずしも不正競争防止法上の「営業秘密」として保護されません。また、事実に関するデータである等の理由により創作性等の要件を満たさない場合には、著作物としても保護されないため、現行の法制度では十分なデータの保護が行われていないとの指摘がありました。

 本制度は、かかる問題を解決するため、ID・パスワード等により管理しつつ相手方を限定して提供するデータ(限定提供データ)を不正に取得・使用・提供する行為を新たに「不正競争行為」に位置付け、これに対する民事上の救済措置(差し止め請求権等)を設けるものです(改正後不正競争防止法(以下「法」といいます。)第2条第7項、同条第1項第11号~第16号、第19条第1項第8号)。

 立法化段階では営業秘密と同様に刑事罰の導入を求める声もありましたが、今回の改正では差止請求等の民事的救済措置の対象とするにとどめられました。

2.「限定提供データ」の定義

 「限定提供データ」とは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法)により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く。)をいい、主としてビッグデータが念頭に置かれています。

 秘密として管理されているものが除外される理由は、限定提供データが特定の者に対して提供・共有されるべき性格のもので、秘密管理性・非公知性を要件としないためであり、秘密として管理される非公知のデータは、引き続き「営業秘密」として保護されます。

3.不正競争対象行為

 不正競争に該当する対象行為の概要は以下のとおりです。

 ① 不正取得類型

 不正取得類型とは、アクセス権を有しない者が、不正の手段(窃取、詐欺、強迫等)により限定提供データを取得、使用又は開示する行為をいいます(法第2条第1項第11号)。

 同項第11号に該当する取得行為を「限定提供データ不正取得行為」といい、(同号括弧書)、限定提供データ不正取得行為が介在した場合における当該取得行為者からの取得者も、一定の場合には不正競争に該当するものとされています(同項第12号・第13号)。

 ② 著しい信義則違反類型

 著しい信義則違反類型とは、限定提供データを保有する事業者からその限定提供データを示された場合に、図利又は加害の目的で、その限定提供データを使用する行為(その限定提供データの管理に係る任務に違反して行うものに限る。)又は開示する行為をいい(法第2条第1項第14号)、その悪質性の高さから不正競争とされました。

 この開示行為は「限定提供データ不正開示行為」と呼ばれ(同項第15号)、一定の場合にはその取得者も不正競争に該当する場合があります。

「限定提供データ」に係る規定の施行日は平成31年7月1日です。

当事務所は、不正競争防止法を含め、知的財産分野について幅広い案件を取り扱っております。ご不明点がございましたら、お気軽にお問合せください。

今回の改正を含め、不正競争防止法の改正については以下のサイトをご参照ください。

http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/unfair-competition.html#kaisei

≪弁護士  吉浦 くにか≫