労働基準法大改正の見通し
労働基準法は2026年に大幅改正される予定でしたが、各社報道によれば、今期通常国会での法案提出が見送られることになりました。
もっとも、改正自体が見送られたわけではなく、今後も労基法改正に向けて、活発な議論が行われると予想され、事業主においては、引き続き、改正の動向に注視が必要です。
以下、今回議論されていた2026年労基法大改正の概要をまとめます。
①連続勤務の上限規制
現行法においては、「毎週少なくとも1日の休日」を与えなければなりませんが、特例措置によって「4週間を通じて4日以上の休日」(4週4休)も認められています。この特例措置の場合、極端な例ですが、第1週初めに4日の休日を与え、第8週最後に4日の休日を与えるという日程にしたとき、理論的には48日連続勤務が可能となっていました。このような、長期にわたる連続勤務は、労働者の心身に与える悪影響が大きいとの懸念等から、13日を超える連続勤務を禁止することが検討されていました。
②法定休日の特定義務
現行法においては、法定休日の明確化は義務ではありませんが、休日の種類が不明確であるが故に割増賃金の計算を巡るもトラブルも多々発生しています。そこで、法定休日を明確に特定することを義務化することが検討されていました。
③勤務間インターバル制度の義務化
現行法においては、就業から次の始業までに一定以上の休息時間を確保する「勤務間インターバル」制度は企業の努力義務にとどまり、その導入率はわずかであること等から、インターバルを原則11時間以上設ける等の措置をとることを義務化することが検討されていました。
④有給休暇時の賃金算定における通常賃金方式の原則化ルールの明確化
現行法では、有給休暇期間のおける賃金計算方法について、「通常賃金計算方式」(=通常勤務と同額の賃金を支払う)、「平均賃金計算方式」(=平均賃金を支払う)、「標準報酬日額方式」(健康保険料の算定基準の標準報酬月額をもとに支払う)の3つがあります。しかし、「平均賃金計算方式」や「標準報酬日額方式」を採用した場合、日給や時給で勤務する従業員については平均賃金が低下し、ひいては有給休暇期間中の賃金も減少する可能性があるため、「通常賃金計算方式」によることを原則化することが検討されていました。
⑤「つながらない権利」のガイドライン策定
「つながらない権利」とは、勤務時間外における会社からの連絡に対し、従業員が対応しない権利のことを指します。昨今では、情報通信技術が発展し、職場にいなくとも業務に関するやり取りを行うことが容易となっており、“仕事”と“プライベート”の線引きがより曖昧になりつつある状況の中で、勤務時間外において業務から遮断される権利として「つながらない権利」が活発に議論されており、既に欧州等では、「つながらない権利」を法制化した国もあります。2026年の労基法大改正にあたっては、この「つながらない権利」についてガイドラインの策定が検討されていました。
⑥副業・兼業者の割増賃金のルール見直し
現行法においては、割増賃金の計算においては、従業員が副業・兼業を行っている場合、事業主が異なる場合でも本業と副業・兼業の労働時間を通算し(=通算制)、法定労働時間を超えた部分につき割増賃金を支払う必要があります。しかし、通算管理が煩雑であり、企業の負担も大きいこと等から、割増賃金計算においては通算制を廃止することが検討されていました。
⑦法定労働時間週44時間の特例措置廃止
現在、法定労働時間は、原則として「1日8時間・週40時間」ですが、特定の対象業種では「1日8時間・週44時間」とする特例も存在しています。当該特例措置の利用率はわずかであること等から、この特例を廃止することが検討されていました。
以上
≪弁護士 江口 聡≫
