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取適法の令和8年1月1日施行に向けた対応~下請法から取適法へ~

弁護士髙石 竜一

下請法(下請代金支払遅延等防止法)の大幅改正と名称変更を伴う取適法(正式名称:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律、略称:中小受託取引適正化法)が、令和8年1月1日に施行されます。

下請法から取適法への改正は、企業取引研究会「企業取引研究会報告書」(令和6年12月25日)における議論を踏まえて行われるものであり、これまで下請法とは無縁であった会社においても対応が必要となる可能性が生じるなど、極めて重要な改正点が含まれています。

企業取引研究会「企業取引研究会報告書」(令和6年12月25日)については、当事務所の福山靖子弁護士が執筆した過去のトピックス記事をご参照ください。

【下請法の改正等に関わる「企業取引研究会報告書」が公表されました(令和6年12月25日)】
https://spring-partners.com/topics/news/3210/

取適法における改正点は多岐にわたりますが、実務上特に影響が大きいと考えられるのは、以下の4点であると考えられます。

1 従業員基準の追加

下請法においては、資本金等要件により対象事業者に該当するか否かが判断されていましたが、取適法においては、従前の資本金要件に加えて、新たに従業員基準が設けられます。

具体的には、取引類型に応じて、従業員300人超の事業者が従業員300人以下の事業者に対し取適法の対象となる取引を委託する場合、又は、従業員100人超の事業者が従業員100人以下の事業者に対し取適法の対象となる取引を委託する場合に、取適法が適用されることとなります。

2 特定運送委託の対象取引への追加

下請法の対象となる取引は、①製造委託、②修理委託、③情報成果物委託、④役務提供委託の4類型でしたが、取適法の対象となる取引には、上記4類型に加えて、⑤特定運送委託が含まれることとなります。

たとえば、委託事業者(下請法でいう親事業者)が取引先に物品を販売するに当たって、当該物品の運送を中小受託事業者(下請法でいう下請事業者)に委託する場合に、当該物品運送の委託は特定運送委託に該当し、取適法が適用されることとなります。

3 協議を適切に行わない代金額の決定の禁止

下請法には親事業者の禁止行為として11事項が定められていましたが、取適法においては、新たに、協議を適切に行わない代金額の決定の禁止が定められます。

従前、協議を行わない結果として定められた代金額が通常の対価を大幅に下回っていた場合に買いたたきに該当すると考えられていた行為類型につき、決定された代金額が通常の対価を大幅に下回っているか問わず、協議を適切に行わずに代金額を決定することそのものが禁止されることとなり、禁止対象が拡大されたものと理解されます。

4 手形払等の禁止

下請法においては、割引困難な手形を交付して下請代金を支払うことが禁止されており、令和6年11月1日以降は、サイトが60日を超える手形はこれに該当するおそれがあるとして行政指導の対象とされていました。

取適法においては、さらに進んで、対象取引の代金の手形払が全面的に禁止されることとなります。併せて、取適法においては、支払期日までに代金相当額を得ることが困難な支払手段による代金支払も禁止されます。

なお、対象取引の代金の手形払等が禁止されることに伴い、下請法中の割引困難な手形の交付に関する規制は廃止されることとなります。

取適法の詳細については、以下の公正取引委員会のホームページもご参照ください。

【公正取引委員会 中小受託取引適正化法(取適法)関係】
https://www.jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou.html

冒頭に述べたとおり、取適法の施行に際しては、これまで下請法とは無縁であった会社においても対応が必要となる可能性が生じるとともに、従来下請法が適用されていた会社においても改めて対象取引の特定や新たな規制を遵守するため体制の確立など種々の対応が必要となるものと考えられます。

当事務所では、当局からの調査対応を含めた下請法への対応につき豊富な実務経験を有する弁護士が多数所属しているとともに、取適法のパブリックコメントへの回答など取適法の実務対応に関する情報にキャッチアップすることにより、クライアントの皆様に最新かつ最適なアドバイスを提供する体制を整えております。取適法への対応についてお困りごとがありましたら、当事務所までお問い合わせください。

<弁護士 髙石 竜一>